1997年8月2日(土) Beirut ⇒ Jounieh ⇒ Byblos ⇒ Tripoli 晴れ
午前、最初にアメックスに行き、500USDのトラベラーズチェック2枚をキャッシュにしてもらう。2USDのコミッション。その後、インフォメーションで地図をもらい、バスを乗り継ぎ、ジェニエ(地中海に面した海辺の保養地)へと向かう。途中混雑がひどかった。後ろの席の男性が、ここだと教えてくれたところで降りたおだが、場所が違っていて、そこからさらにセルビス(乗合ワゴン車)を拾うことになる。
ジェニエに到着して降りるが、ケーブルカーまで行くのに道路を渡ることができない。幹線道路が走っているのだが、横断歩道、信号、歩道橋、すべて無し。車は一瞬の隙間もなく、どんどん走ってくる。長い時間渡るチャンスをうかがうが、とても無理だ。何kmにもわたって人が渡れない道など、現地の人はどうしているのだろうか。神経を疑ってしまう。仕方なく、タクシーを拾うことにする。道を横断するためにタクシーを拾ったのは生まれて初めてのことだ。タクシーは随分走って折り返し、街に入ってケーブルカーまで行ってくれた。
折り返すまでの道のりに信号も何もなかった。ここを渡るのは、日本の高速道路を横断することの何百倍も難しいと思う。いったいここの人たちは、道を渡るのにどうしているのか不思議に思えてくる。
ケーブルカーは高かった。が、乗ってみて、その景色の美しさに納得してしまう。そして、どのくらいの長さがあるのだろうか、こんなにも長い距離を一本のケーブルで登っていくケーブルカーも初めて見た。山上に着くと、そこにはマリア像があり、上からの眺望は素晴らしく、20km以上離れたベイルートがうっすらと見えていた。

山頂には教会もあった。この教会が、最新のデザインで、キリスト教会とは思えない形状をしていた。こお教会の向こう側には、古いアルメニア風を思わせる教会があって美しかった。町並みはイスラムというより、もう完璧にフランスだ。南欧のリゾートに来たような感じがする。ここのビーチでは、女性も水着になっていた。何かレバノンに来てから、これまでの閉塞感から解き放たれたような感じがする。どうしてもアラブはどこに行っても男ばかりで、精神的に閉ざされた感じになってしまうものだ。
バスを待っていたら、目の前にイタリアンレストランがあったので、思わず入る。スパゲティカルボナーラを食べる。久しぶりに美味しいパスタに出会った。
バスに乗って海沿いを進む。海沿いはどこに行ってもこぎれいな家が建ち並び、海の青をバックにのどかな雰囲気を醸し出している。
30分ほどでビブロスに到着する。ここは紀元前7000年くらいから人が集落を形成しだし、紀元前3000年頃にはエジプトと親交を持ち、貿易により富を蓄えていたフェニキア人の街だった。その交易物の中には、エジプトのパピルス等もあり、のちにギリシャによって利用され始めるが、エジプトから直接ではなく、ビブロスを経由してやってきたものだったので、物を書いたパピルスを束ねたものをBiblionと呼んだのだそうだ。ここから聖書をバイブルと呼ぶようになったのだそうだ。

ビブロスの遺跡の中で姿を残しているのは、十字軍の築いた城だけだが、アムール人の集落や、ローマ人の時代、フェニキア人の時代等、何千年もの長きにわたって積み重なった貴重な遺跡だ。この遺跡は、また、世界で最初に都市計画を行った都市のひとつだということだ。海に面していて、素晴らしい眺めだ。また、見たこともないような植物が生えていたりする。城から見る旧市街は、十字軍が支配していたせいか、または、フランスの影響のせいか、ヨーロッパ的だ。赤レンガの屋根がきれいだ。そしていたるところにキリスト教会がある。保養地としても有名なのか、ホテルが結構あり、ビーチは海水浴に来た人たちでにぎわっている。ただし、不思議なことだが、彼らはゴミだらけのビーチが気にならないらしい。まったくゴミ捨て場かと思うような、凄まじいゴミだらけのビーチだった。

またバスに乗り、トリポリ(地中海沿岸に広がるレバノン第2の都市)に向かう。ここトリポリでも市街戦があったらしく、建物の壁には弾丸が無数撃ち込まれている。また、破壊されたままのビルもある。ここまで来ると、街が随分シリアに近くなる。タクシーもかなりの数シリアからやって来ている。ホテルはPalace Hotelにする。昔の貴族の館なのか、ボロボロになった外観からは、その昔素晴らしい建物であっただろう面影を見ることができる。サロンは広く清潔だ。2人で20,000レバノンポンド(約13USD)のバス・トイレ共同の部屋に泊まる。
夜、街に出る。20時頃にはほとんどの店が閉店し、さびしい街となる。この街の名物、ハルワート・エル・ジブン(Halwat el jibn)という餅状のチーズ生地にシロップとクリームを乗せたお菓子を食べる。最初こそ強烈な香料に顔をしかめたが、食べるうちにどんどん美味しく感じるようになり、その甘さ抑えめの味が美味しく感じてくる。あと、街には、教会とモスクが目と鼻の先にあったりするのが不思議に思えた。うまく共存しているようだ。
話は戻るが、トリポリに向かうバスの中で話をしたレバノン人がいた。彼はイスラム教徒だ。いろいろと仏教徒について質問をしてくる。彼は4人奥さんが欲しいと言っていたので、ここレバノンでは多妻は認められているのかと驚く。また、この男は、しきりに旅行の目的や、その他、赤軍の話をしたり、聞いたりしてくる。何か先日の私服警察のように、さぐりを入れている感じだ。もしかしたら警察関係の人間ではないかと思う。やましいことは何もないのだが、どこかでいつも見られているような、少し嫌な気がする。
本日の支出 約38.4USD
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