1月18日(土) 秋保温泉~仙台市~東鳴子温泉
朝は10時半のホテル送迎バスに乗って仙台駅に向かう。仙台では、仙台市博物館に足を運ぶ。時間的には余裕がなかったのだが、どうしてもここに展示してある、支倉常長の慶長遣欧使節団の資料展示が見たかったのだ。

この慶長遣欧使節団を派遣した伊達政宗。関ケ原の戦いで徳川家康が覇権を握ったが、遣欧使節団を派遣した1613年の時点では南蛮勢の力を借りることで形成逆転の可能性がまだ少しだけ残されていたのかも知れない。
伊達政宗は、徳川家康が貿易を望んでいたスペインとの関係が破綻したことを承知のうえ、徳川とスペインの交渉を担ったルイス・ソテロが主導する形でガレオン船サン・フアン・バウティスタ号を建造。1613年10月にヌエバエスパーニャ(メキシコ)目指し出帆した。
メキシコを目指したのは、ヌエバエスパーニャとの交易を求めていたこともあるが、ルイス・ソテロがスペイン系のフランシスコ会の宣教師だったためでもある。天正遣欧使節団はポルトガルが支援するイエズス会が主導したため、マカオやインドを経由してヨーロッパに向かっている。日本の戦国期はイエズス会の独壇場だったが、16世紀の終わりころからスペイン系のフランシスコ会やドミニク会が攻勢を仕掛けてきて、同じカトリック教会の中でも、日本の布教における勢力争いが起こっている。
支倉常長の遣欧使節団は、初期の頃はスペインにも表面上は歓迎されているが、そのうち徳川方からの情報による妨害や、日本の政治情勢についての報告が上がるにつれ、伊達政宗が日本を代表しているものではないことがはっきりし、最後はかなり冷遇されて帰国の途に就くことになる。
支倉一行は大阪冬の陣の頃にマドリッドに滞在し、国王フェリペ3世に謁見し、その後ローマへと向かっているが、やはりこの大阪の冬、夏の陣で徳川の覇権が完全に確立したとの情報がヨーロッパにも伝わり、支倉一行が日本の王の使者でないことが明らかになり、次にスペインに戻ってきたときにはほとんど相手にされなくなったようだ。
伊達政宗は徳川家康の許可を得て、遣欧使節団を差し向けたという説をよく見るが、そのようなことを明確に示す文書もないようだ。やはり、伊達政宗は最後の覇権の希望をこの遣欧使節団に託したのだと思う。だからこそ、最初はある程度受け入れられたが、徳川覇権が完成するにつれて、冷遇されるに至ったのだと思う。すなわち、伊達政宗自身が、自分こそが日本を代表するものだということをこの使節団を通じて発信していたものと思われる。
支倉常長は、フィリピンでスペイン副王からの書簡をもらうことになっていたため3年程フィリピンに留まるも、最終的にその書簡が発行されることはなかった。失意のうちに日本に帰国したのが1620年。帰国した支倉常長はその2年後に亡くなっている。
岡本大八事件(1609年~1612年)の後は、相当にキリシタンに対しての弾圧が強まったが、仙台藩ではその状況を知りつつも、支倉常長が帰国した1620年から藩内のキリシタン弾圧を始めている。伊達政宗は、一縷の望みも潰え、完全に徳川家の配下になったことを物語るような印象を受けてしまう。そして、支倉常長の遣欧使節団の歴史は明治になるまで封印されてしまう。
日本各地のキリシタン勢力が、このような秘められた野望を持っていたとすると、天草・島原の乱のとき一揆勢が考えたように、各地の勢力がこの乱に刺激され、呼応して立ち上がるという希望も、あながちただの幻想と片付けられない側面があるように思う。
この慶長遣欧使節団は総勢180名いたとされているが、支倉常長がローマに向かう際、全員が一緒に動いたわけではなく、一部は数年間にわたり、スペインのセビリアの近くの村Coria del Rioに滞在して支倉らの帰りを待っていたのだが、その者たちが地元女性と結ばれ、日本に帰国せず土着している。今も、その村の人の多くがJaponさんという苗字を持っている。ハポンさん。すなわち“日本”さん。支倉常長一行の子孫たちが、今もスペインの地に根を下ろしている。
仙台市博物館を後にし、仙台駅から新幹線で小牛田に行き、そこから陸羽東線に乗り継ぎ、鳴子御殿湯駅に行く。今日は東鳴子温泉の宿“勘七の湯”に泊まる。部屋食で飲み物持ち込みOK。凄まじく鄙びた感じもあるが、それもまた良し。



仙台から東鳴子温泉までの駅で買った日本酒と、この東鳴子温泉の尾形商店で買った地元限定酒を、夕食時に飲み比べる。

宮城県加美郡加美町の田中酒造に東鳴子温泉の尾形商店が作らせた限定酒“天音”(純米吟醸)。これはとびきり美味しい酒だった。とにかく自分の感性の中では、本当に美味しい理想的な日本酒だった。
次に勝山の縁(特別純米)。仙台市伊達家勝山酒造の酒で、創業は1688年だそうだ。これは食用の米ひとめぼれを使った酒のせいか、今まで飲んだ酒の味とは若干違う。果実的なフルーティさがある。美味しい。
次は大崎市の一の蔵(特別純米)。これも美味しい酒だった。
明日は山形に向かう。山形の酒を楽しみにしたい。
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