10年も前になろうか。
尾道の坂道を歩いていたとき、ある神社で出会ったおばあさん。
神社でぼーっとしていたら、おばあさんがやって来て、境内を指しながら、「この辺はきれいになったねー」と。
「はあ、そうですか?でも、自分は旅行中なので前がどうだったかわかりません。」と僕。
「はあそうな。どこから来たん?」
「熊本です」
「熊本ってどこだったかのー」と頭を抱えるおばあさん。
「九州ですよ。」
「はは、そうか。わしゃ頭悪いけーのー」とおばあさん。「今日はどこ行くな?」
「明日から仕事なので、これから熊本まで帰ります。」
「そうかー。でも、うちに泊まっていかんね?」とおばあさん。「うちは息子ももう出て行って、私ひとりしかおらん。泊まって行け。」
「残念だけど帰らなくてはいかんもんで。また来た時に泊めてください。」
「はあ、そうかー。そんなら、次来た時は泊まって行きぃ。」
「是非。」
「この辺で、大●さ~ん、って大声で呼べば、出てくるけぇね。わたしゃ小さいけど大●さんじゃ。がははははは!」
「次来た時は、この辺で、大きな声で大●さ~んって叫ばせてもらいます。」
「じゃ、気をつけて行きんさい」
「はい」
そうして、笑いながらこのおばあさんと別れた。もう二度と会うことはないだろうけど、なんかとてもあったかい出会いだった。
そして尾道の思い出になった。
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