薩摩藩英国留学生記念館を出て、宿泊するくしき野白浜温泉みすまるの湯に行く。温泉施設に宿泊もできるようになっている。食事は旅館のような豪華なものではなく、温泉施設の食堂なのだが、海が見渡せる広いテラスと庭にテーブルがあり、夕涼みしながら食事を楽しむことができる。昔、バックパックを背負って世界中を旅してまわった。そんなバックパッカーが好む宿には、人と話をしたり、思い思いに本を読んだり、ゆっくりとくつろげるスペースがあるところが多かった。ここはまさにそんなバックパッカー好みの宿だ。温泉も素晴らしく、お湯に浸かった後にテラスでグビッと飲む生ビールは最高だった。また、この宿は海沿いの高台にあるため海が一望でき、景色が素晴らしい。
泊まった日は中秋の名月だった。夜空は晴れていて、このテラスから美しい月夜を満喫した。海風が心地よく、時間が経つのを忘れてしまいそうになる。赤く大きな月が、だんだんと上空に昇り、すこしずつ白く輝く月に変わっていく。とても良い夜だった。
次の日は宿を下りて行ったところにある白浜海岸で海を眺める。このあたりの海は外海になるので、透明度も高く、海に飛び込みたくなる。残念ながら水着を持ち合わせていなかったので、眺めるだけにする。
海を眺めた後は、ちかび展示館に行く。これは、串木野地下石油備蓄基地という、地下に石油を備蓄する施設を紹介する展示館だ。日本では、3ヵ月分の石油を備蓄しており、ここはそのうちの5日分を備蓄しているそうだ。たかが5日分だが、ここには地下の岩盤をくりぬいた長さ555m、高さ22m、幅18mの円筒形の岩盤貯蔵タンクが10基も横たわり、その10基の岩盤タンクに石油が貯蔵してあるのだそう。とてつもなく巨大な備蓄基地だ。
ひとつひとつのタンクは、くり抜かれた岩盤の壁にコンクリートを吹き付けてある構造だ。その中に石油を入れて貯蔵してあるのだが、地下なので当然地下水が浸透してくる。その地下水の圧力で石油が外に染み出さないようになっているのだそうだ。簡単に言うと、地下水に石油が浮いている状態で貯蔵されている。
ここもスタッフの方が館内を案内してくれる。案内してくれることで、理解がどれほど深まることか。タンカーから石油を貯蔵タンクに移す過程などもとてもよく理解できた。
この備蓄基地から石油が放出されることはほとんどない。原油は元々地下深くにある。その状態と同じく地下に眠っている状態にしてある。備蓄の方法は、地上・地中タンク方式、洋上タンク方式等があるが、このような地下備蓄方式は、国内では岩手県の久慈市と愛媛県の今治市の3か所だけなのだそうだ。
今まで知らなかった世界に触れて、とても良い社会見学となった。
コメント