秋田駅8時19分のリゾートしらかみ号に乗った。この列車は秋田と青森を結ぶ五能線を走る、全席指定の人気の観光列車だ。列車は、橅、青池、くまげらと3種あり、それぞれ特徴が違う。
秋田駅を出発した列車は八郎潟干拓地を過ぎ、日本海を左手に見ながら、白神山地の自然を眺めたり、岩木山の美しい姿を楽しんだりしているうちに五所川原、弘前、終点青森へと進んでいく。
実はこの列車に乗るのは2回目だ。前は弘前駅から秋田駅に向かった。何年か前の真冬のことだった。さすがに7月ともなれば、冬のイメージとはかなり違い、山々の緑も深く、海も穏やかな感じがする。
能代駅では、地元の高校がバスケットボールの強豪校であるため、バスケットを町おこしの題材として積極的にPRしていた。ここでは列車の停車時間が10数分程あるのだが、ホームに設けられたバスケットにゴールを成功させると記念品をゲットできるというイベントをやっていた。乗客も大喜びで老若男女問わず参加していたのが印象的だった。私は見事ゴールを決めて木製のコースターをゲットした。木製品も能代の特産品のようで、その辺のPRも上手だなと思った。ホームには他に地元の温泉宿の紹介や、日本酒などの特産品も展示してあったが、こんなイベントでもない限り、ホームでゆっくりとそれらの展示物を見たりすることはないと思うので、町のPRにはとても良いアイデアではないかと思う。楽しいひと時だった。
10時37分 ウェスパ椿山駅で下車する。ここには不老不死温泉という、とても気になる温泉があるからだ。駅前には、観光列車の到着に合わせて不老不死温泉の送迎バスが待機している。そのバスに乗ると、約5分ほどで不老不死温泉に到着した。
不老不死温泉は青森県西津軽郡深浦町というところにあり、日本海にせり出たひょうたん型の露天風呂が有名な温泉だ。日帰り湯は600円だが、リゾートしらかみ号で来ると割引してくれる。温泉が3か所あるので、移動に便利なように浴衣もかりる。200円なり。
内湯で体を洗って、また浴衣を着て、ひょうたん型の露天風呂に歩いていく。昔は何の覆いもない混浴だったということだが、今はきちんと混浴と女性専用に仕切りをしてあるので、女性の方でも安心して温泉を楽しめるようになっている。
露天風呂は海にせり出しているので、波がゆるやかに押し寄せる海とつながっているような感覚で心地よい。かもめが近くの岩場で魚を狙っている。小さな魚たちが岩場の浅瀬を泳いでいる。耳を澄ますと風の音、波の音、鳥の鳴き声などに癒される。お湯につかりながらも、日本海の自然の中にいることを実感でき、とても気持ちがよい。
お湯は鉄分が多いので褐色に濁っており、露天風呂は温度も適度にぬるくて、ゆっくりと入れるのがとても良い。
食事も日本海の新鮮な刺身を食べることができ満足。新館側にもうひとつ温泉があり、これは高台から日本海を見下ろす形で、下の露天風呂とはまた違った景色を眺めながら入ることができる。
13時17分発のリゾートしらかみ号に乗るべく送迎バスに乗る。最初の列車を降りて次の列車に乗るまでの2時間で、ゆっくりと温泉に入り、食事を楽しむことができた。
千畳敷駅では、長くはないが時間をとってくれるので、津軽国定公園に属する千畳敷海岸を散歩することができる。とてもひろい岩場の海岸で、1792年の地震で隆起してできた地形なのだそうだ。ゆるやかで平な岩場なのだが、ところどころに切り立った奇岩の姿が美しい。
さらに列車は進んで、右手に岩木山が見えてくる。津軽富士と呼ばれており、本当に美しい山だ。前回冬に見たときは、雪をかぶり、なんとも神々しく美しい山だと思ったことを思い出す。今回は雪はないが、やはりやはり美しい山には変わりない。高さが1,625mとのことだが、はるかに大きく、高く感じる威厳のある山だ。
五所川原駅に着く前の20分ほどの間、一番前の車両で津軽三味線の演奏があった。三味線の音は生でないと伝わらない。琵琶などもそうだ。弦の反響が空気を揺らし、その振動が体の細胞を揺らしてくる。CD等で聴くのとは別次元の響きだと思う。この観光列車に乗って良かったなと思う。
五所川原駅で旧友に会うため、私はここでこの観光列車を降りることにした。
※列車の時刻などは、あくまでも今回の旅で利用した列車の時刻です。ご旅行の際には、必ず時刻表等をお調べください。
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