アジア旅行記 1997年7月24日 シリア(ラタキア~タルトゥス)

旅日記

1997年7月24日(木) Lattakia ⇒ Tarutus   晴れ

朝からミニバスにてタルトゥスに向かう。ラタキアから80kmほどあり、1時間半の道のり。たまに地中海が見える。このあたりは降雨量が多いのか、緑豊かな土地だ。また、ビニールハウスで農作物を栽培しているので、景色が少し日本の農村に近い感じがする。また、シリアの中で、短いが唯一の海岸線のためか、海沿いに時折大きな工場が見える。どれも煙をもうもうと吐いていて、どんよりした気分になる。

タルトゥスに到着すると、まず大きな公園があった。全体的に整然と整った街のようで、清潔な印象を受ける。まずはツーリストインフォメーションに行って街の情報を取集。この期間、ちょうどフェスティバルがあっており、夜の8時から先の大きな公園にてコンサートがあるという情報を入手。インフォメーションで紹介されたラファエル(Raffoul)ホテルに泊まることにする。部屋には扇風機もあり、もちろんバス・トイレ付。それに冷蔵庫やキッチンがあり。サロンではテレビも観ることができる。こぎれいで快適な宿だ。また、この宿は博物館の目の前なのが良い。1泊2人で400シリアポンド也(約8.25USD)。そして、宿のご主人が明るくて良い人だ。昔しばらくイギリスに住んでいた時の友達でレバノン人のジョンを思い出す。明るくて、フレンドリーで、懐が深い感じの人柄がよく似ているように思う。このあたりの海沿いの人たちはこんな感じの人が多いのだろうか。

一息つき、まずはレストランを探す。レストランがなかなか。レストラン自体の数があまりないようだ。途中古着屋でTシャツを買う。やっとレストランが並ぶ通りを探し出し、鶏肉の料理を食べる。ここにはチキン料理以外ないのだ。店の前ではチキンが串刺しにされて火で炙られている。1羽を妻と半分ずつ食べる。チキンの丸焼きには、サラダとパンと豆のパテ(ホンモス)がついている。こっちの人は、パン(シリア風の薄いクレープ状のもの)で鶏肉を引きちぎってつまみそのまま食べたり、豆のパテにつけて食べている。なかなか豪快な食べ方だ。それにしても、シリアに来て唐辛子が辛い。ひと口食べる度に死ぬほど辛い。控えた方が良いようだ。

レストランの後、博物館に行く。キリスト教の教会をそのまま博物館にしてある。これと言って観るべきところのない、こじんまりとした博物館だった。しかしながら、博物館自体が昔の教会というのは良くて、このイスラム教の国で見るキリスト教会は、なかなか感慨深いものがあった。

その後、海沿いまで歩き、フェスティバルの会場に向かう。この近海でとれる魚が入った水槽がいくつも展示されているのだが、ほとんど水槽の中の魚は死んでいて、その死骸が小さな水槽におなかを上にして浮いている。もちろん生きた魚の水槽もあるのだが、その中の魚も何匹が死んだまま浮いている。いったい何のだろうかと思う展示物だった。ここまで大味な展示を見たことがないし、これからも見ることはないだろう。海沿いには露店がたくさん出ていた。

それから舟に乗って、3km沖合にあるアルワド島に行く。アルワド島は紀元前2000年頃からフェニキア人が住み始め、中世には十字軍の聖地奪還ための最後の拠点となった島だ。シリア唯一の有人島。

桟橋から島に上陸すると、いきなりアサド(ハーフィズ・アル・アサド)大統領の黄金の像が立っていた。シリアはもう、いやと言うほど、アサド、アサド、アサド・・・・。写真しかり、立像しかり。キューバでは、いたるところに英雄チェ・ゲバラの写真が飾ってあったが、ここのアサド大統領はそれをはるかに凌駕している。すごいものである。10mおきに、大統領の写真を見ることになる。それほど熱狂的な支持者が多いのか。彼は神のように重要な存在なのだろうか? それとも社会主義独裁というのは、それほどまで強力な指導者、カリスマを必要とするのだろうか? それなしには存在しえないものなのだろうか? それとも単にアサド大統領が異常に自己主張の強い人物なのだろうか? それとも、そこまで祭り上げなければ、体制が崩壊するのだろうか? イスラム教は偶像崇拝を禁じているはずだが、これではまさに偶像崇拝そのものではないか。

島を歩くと、昔ながらの手法で舟を造っている。木を削り、板を曲げ、一枚一枚丁寧に貼り合わせた船が、クジラのような骨組みをさらけ出しながら置いてある。昔から、ここの船は地中海を駆け回っていたということだ。さすが海の民族フェニキア人の土地だ。島には海との境に建つ古い城跡があった。しかし、この中のごみが凄まじい。海も道路もすべてがゴミ捨て場のようだ。ものすごく汚く、異臭が漂う。せっかくの海と遺跡もこれでは台無しだ。こっちの人達は、ごみの投げ捨ては当たり前のことらしく、帰りの船で知り合った母娘3人も、我々がゴミを捨てずに持ち帰ろうとしているのが理解できないようだったし、夜は夜で、アパートの5階くらいから、ごみが詰まった大きなごみ袋を、下の道路に投げ捨てている豪快な輩もいた。昔は全ての物が自然に帰っていたのだろうが、今は時代が違う。ビニールは海をさまよい続けるだろうし、油や化学製品は、魚のお腹の中に入って、生まれてくる魚たちの健康やDNAがダメージを受けるだろう。とにかく景観が台無しだ。シリアに来た人たちのほとんどがシリアを汚いと思うようだが、これを見て汚いと思わない人がいると思えない。考えなければいけない時に来ているのではないか。

父親が日本に行ったことがあるという青年に出会った。いずれにしてもシリア人はフレンドリーな人々のようだ。だが、トルコの人たちよりも、あっさりしているのが良い。その後、コーラを飲んだり、散歩したりして、また舟に乗り、15分ほどでタルトゥスに戻る。島とタルトゥスの間には、無数のコンテナ船などが浮いており、舟はそれをよけながら行かねばならないほどだった。海には案の定、大量のビニールが浮いていた。

ホテルに戻り洗濯をする。今日の夕陽は素晴らしかった。久しぶりに海に沈む夕日を眺めた。

夜は公園にコンサートを観に行った。が、公園は人で埋め尽くされている。とにかくものすごい人だ。タルトゥス中の人々が、この公園に集まったのではないかと思うほどの人だ。舞台では、社会主義国でよく見るような子どものダンスがあっていた。旗を持って踊り、最後に大統領の写真を“ハッ”と言う掛け声と共に掲げるところなど、いかにもという感じがした。その他、アラブのダンスや歌が披露された。

それにしても、この地中海沿いの地方は、女性がかなりオープンな恰好をしている。それに女性が多い。女性のイメージが、ヨーロッパにいるのとさほど変わらないように思う。また、地中海沿いは豊かなのか、服装も清潔な人がほとんどで、貧しさを感じない。ただ、やはり夫婦以外のカップルというのは存在しないようで、ほとんどが男は男、女は女で行動している。そして男同士で手をつなぎ、腕を組んで歩いているのにびっくりする。文化や習慣の違いは面白いものだ。

シリアのビールのラベル。なかなか美味しい。(AL SHARK BEER)

本日の支出 約15.4USD

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